サムライ Samurai:侍

 

サムライ

  サムライは職業戦士で、武技を鍛えられた高貴なるクラスの一員だ。彼らは単に社会に貢献するためだけに訓練するわけではなく、生まれつき義務や忠誠、名誉などの全てに影響を被る人生を送る。この体制から分離されたサムライはもはやサムライではない;彼は社会における一般的なファイター、名誉の欠如した牢人となる。

  冒険:サムライの第一の責務は君主、通常は自身の族長への奉公だ。これは終わり無き冒険人生の源泉にして冒険人生の障害となりうる。下級サムライの君主は、彼に不可思議な事件調査を命じたり、あるいは山賊の一団を討伐するよう命ずるかもしれない。もし彼がこれらの任務を見事に遂行するなら、彼の君主はより重大な案件を預けることにするだろう。しかしながら、一般にサムライは君主の命令、少なくとも許可を得なくてはシャドウランド遠征隊に加わったりしてはならず、また君主が彼に重要な命令を課すなら彼はそれを最優先に解決しなくてはならない。これが重要な障害となるか否かはダンジョンマスター次第になる。

  特性:サムライが武士道、道徳律、忠誠と奉公を厳守する点において、一般のファイターと区別される。彼らの戦闘訓練は ‐ ボーナス特技に反映され ‐ ファイターのそれをに匹敵する。もしサムライが高潔かつ行動規範を貫くなら、彼の剣である父祖伝来の高品質な刃は手の内で覚醒し、サムライレベル上昇と共に魔術能力を顕在化させ、増大していくだろう。サムライにとって不名誉は死に劣り、そして彼の剣を喪失することは考えられる限り最悪の不名誉である。

  属性:武士道、すなわちサムライの規範は、一般的に立居振舞と厳格な名誉に関する奉公を要求する。ただ秩序のキャラクターだけがこの規範を支持し、そして自身をサムライと呼ぶことができる。

  背景:サムライは組織化された訓練校を設立し、彼らの戦技と武士道の信条を学ぶ。ロクガンでは一氏族が少なくとも一校はサムライ校を所有している。蟹一族の飛騨校、鶴一族の大道寺校と柿田校、龍一族の観本校、獅子一族の阿古堂校と松校、鳳凰一族の司馬校、蠍一族の馬唯是校と豸一族の元校と新庄校がロクガンのサムライ校として知られている。

  種族:ほとんど例外なく、ロクガンのすべてのサムライは主要氏族のヒューマンだ。他のキャンペーン設定では、一般にヒューマンとスピリット・フォークのみがサムライになる。なぜならサムライはヒューマン社会の特徴であるからだ。

  他のクラス:サムライは自身が社会の中核となるセレスチャル軍団の尖兵であると信じている。シュゲンジャのみはこの軍団に匹敵しうるが、名誉と軍事力が同等に扱われるこの世界では、シュゲンジャの勢力はいささか劣る。サムライが他のキャラクター(豸一族のバーバリアンや蟹一族のレンジャー)よりも意気軒昂な点は、大小を佩き武士道の規範に則っている事実による。彼らは他のクラスについて君主が尊重しないならば、良くて相棒、または従者であるかのように扱う。

 

ゲーム・ルール上の情報 Game rule Information
  サムライには以下のようなゲーム上のデータがある:
  能力値:【筋力】は近接戦の攻撃ロールとダメージ・ロールを高めるため、サムライにとって特に重要である。【耐久力】はサムライに、多くの戦闘で必要になるだろう高いヒット・ポイントを与えるため、重要である。【敏捷力】は射撃技術を求めたり、高いAC、東洋系特技を求める場合重要である。
  属性:秩序の属性ならどれでも
  ヒット・ダイス:1d10

 

クラス技能
  サムライのクラス技能(そして各技能の対応能力値)は登攀【筋力】、製作【知力】、交渉【魅力】、居合術熟練【魅力】、威圧【魅力】、跳躍【筋力】、芸能【魅力】、職能【判断】、騎乗【敏捷】、真意看破【判断】、そして水泳【筋力】だ。技能解説はPHB第4章:技能を見ろ。〈居合術〉については本書第4章を見ろ。
  1レベルでの技能ポイント:(4+【知力】修正値)×4
  レベルごとの技能ポイント:4+【知力】修正値

 

クラスの特徴
  以下のすべてがサムライのクラスの特徴だ。

  武器と防具の習熟:サムライはすべての単純武器と軍用武器、軽装鎧と中装鎧に《習熟》している。サムライは盾の《習熟》を持たない。レザーより重い全ての鎧は〈隠れ身〉〈軽業〉〈忍び足〉〈すり〉〈脱出術〉〈跳躍〉〈登攀〉〈平衡感覚〉技能に防具による判定ペナルティがあることに注意。また、防具と身につけている装備品5ポンドにつき−1のペナルティが〈水泳〉判定につく。

  父祖伝来の大小 Ancestral Daisho:すべてのサムライが一振りのカタナと一振りのワキザシ ‐ 二振りの高品質武器を持って始める。これらはサムライの祖先が佩いていた武器であり、その武器を護持することはサムライの重要な名誉に関わる問題だ。サムライが冒険を通して宝物を獲得することで、彼は武器の潜在的超常能力を呼び起こす選択権が与えられる。この伝来の刃に関する選択を行う前に、サムライは他の魔法の武器、翡翠武器や魔法武器、テツボウを持ってシャドウランドのフィーンドと戦うことも出来る。
  いつでも、サムライが寺社や神社に引篭もり、そして彼のカタナやワキザシに宿る祖霊を覚醒させるべく祈祷に時を費やすことが出来る (多くのサムライはワキザシではなく、カタナを覚醒させる)。これは表2-2:父祖伝来の大小表に示された価値ある道具を犠牲にしなくてはならない。この犠牲は金貨でなくてもよく、キャラクターは物品を(半額で)売却するよりもむしろ魔法具や価値ある物品をそのまま犠牲にすることができる。サムライは表上の(上級クラスレベルを含む)最小キャラクターレベルを満たさなくてはならず、また彼は寺社ないし神社で犠牲にした1000gp毎に1日を過ごさなくてはならない。その間、彼は伝来の武器の前に跪いて毎日最低8時間を過ごさなくてはならず、その間は飲食や休息をとってはならない。多くのサムライがこの過程でシュゲンジャの助力を求めるが、シュゲンジャの多くはそれに応えないだろう。
  表2-2に記された価格は、ひとつの武器に対し武器ボーナスにもたらす際に必要とされる犠牲の総価格だ。もしサムライがすでに+3カタナを覚醒させているなら、14000gp相当を犠牲にし、かつ2週間の祈祷を行うことにより、彼はそれを+4カタナに覚させることができる。もし同じくサムライが彼の高品質ワキザシを+1ワキザシに覚醒させることを望むなら、彼は2000gp相当を犠牲にしなければならない。
  サムライの父祖伝来の剣が+1武器になる前は、それはあらゆる意味で普通の高品質武器だ。その潜在的超常能力は、それらを覚醒の時まで、魔法の武器と認知されることはない。
  サムライが父祖伝来の剣を喪失するなら、その名は汚され、彼はそれを奪還しなくはならない。彼は他の武器についてこのように覚醒させることは出来ない。
  注釈:若干のキャンペーンで、サムライがタルワール(シミター)やチアン(ロングソード)のような、異なった先祖の武器でプレイを始めるかもしれない。

表2-2:父祖伝来の大小
武器ボーナス犠牲価格最低レベル
+12,000gp
+28,000gp
+318,000gp
+432,000gp11
+550,000gp13
+672,000gp14
+798,000gp15
+8128,000gp16
+9162,000gp17
+10200,000gp18

 

  ボーナス特技 Bonus Feat:ボーナス特技:2レベルにおいて、サムライはボーナス特技を得る。サムライはその後、4レベルと以降3レベル毎に追加ボーナス特技を得る(7、10、13、16、そして19レベル)。これらのボーナス特技はキャラクターの氏族別に下記一覧から選択しなくてはならない。

  蟹一族 ‐ 重甲冑、剛力、非凡な武器に通ずる。特技:《鎧習熟(重装)》、《回避》(《強行突破》《一撃離脱》)、《持久力》、《強打》(《薙ぎ払い》、《突き飛ばし強化》、《武器破壊》、《薙ぎ払い強化》)、《疾走》、《武器熟練》(バトルアックス、グレートクラブ、カタナ、あるいはウォーハンマー)。

  鶴一族 ‐ 神速と敏捷に通ずる。特技:《回避》(《強行突破》《一撃離脱》)、《攻防一体》(《武器落とし強化》《足払い強化》《大旋風》)、《イニシアチブ強化》、《早抜き》、《技能熟練》(《居合術熟練》)、《追加hp》、《武器熟練》(カタナ)。

  竜一族 ‐ 二刀流と素手攻撃を教示する。特技:《特殊武器習熟》(カタナ)、《組みつき強化》(《首絞め》)、《素手攻撃強化》(《防御投げ》《矢止め》《組みつき防御》《投げ強化》《朦朧化打撃》)、《強打》(《薙ぎ払い》)、《武器熟練》(カタナ)。

  獅子一族 ‐ 戦略、知性、意志力に通ずる。特技:《持久力》、《攻防一体》(《武器落とし強化》《足払い強化》《大旋風》)、《イニシアチブ強化》、《鋼の意志》、《氣砲》(《氣砲強化》)、《立往生》、《追加hp》、《武器熟練》(カタナ)。

  鳳凰一族 ‐ 心理と精神的訓練に通ずる。特技:《鋭敏感覚》、《無視界戦闘》、《迎え討ち》、《攻防一体》(《武器落とし強化》《足払い強化》《大旋風》)、《頑健無比》、《イニシアチブ強化》、《鋼の意志》、《早抜き》、《武器熟練》(カタナ)。

  蠍一族 ‐ 移動と汚い戦いに通ずる。特技:《無視界戦闘》、《回避》(《強行突破》《一撃離脱》)、《攻防一体》(《武器落とし強化》《足払い強化》《大旋風》)、《イニシアチブ強化》、《伏せ攻撃》、《早抜き》、《武器熟練》(カタナ)。

  豸一族 ‐ 騎乗戦闘と弓術に通ずる。特技:《鋭敏感覚》、《騎乗戦闘》(《騎射》《蹂躙》《駆け抜け攻撃》《猛突撃》)、《近距離射撃》(《遠射》《精密射撃》《速射》《機動射撃》)、《武器熟練》(スピア、ランス、ボウ、あるいはカタナ)。

  氏族に属さないキャラクターは、最適な戦法を教示する氏族を代理として選択するべきだ。彼らはその後、その氏族の一覧からボーナス特技を選択しなくてはならない。
  サムライは特技の前提条件を得るまで、ボーナス特技を入手することは出来ない;条件を必要とする特技は()として区切られている。サムライはボーナス特技獲得の際、能力値や基本攻撃ボーナスなどのすべての前提条件を満たさなくてはならない。

  行動規範 Code of Conduct:サムライは秩序属性でなければならず、望んで混沌行為を犯すなら、彼自身と一族、剣の名を汚すだろう。さらに、武士道のサムライ規範は常に勇猛果敢に死に臨み、君主には忠誠を 不名誉には応報を求め、怯懦は忌避しなくてはならない。武士道の基本原理は名誉、忠誠、勇気だ。これらの指針に反することは不名誉をもたらし、家名を汚した角で切腹(自殺儀式)をする仕儀となるかもしれない。

  元サムライ Ex-Samurai:秩序属性を離れるか、あるいは武士道に反するサムライはサムライレベルを得ることができない。彼はすべてのボーナス特技を維持するが、彼の伝来の武器は“覚醒”した魔術的能力を喪失する。もしサムライが秩序属性に戻るなら、彼は(PHBアトーンメント呪文説明を参照)贖罪し、そして武器を以前の状態に復元し、サムライとして成長すべく名誉挽回しなくてはならない。

表2-1:サムライ:東方の冒険
レベル基本攻撃ボーナス頑健セーヴ反応セーヴ意志セーヴ特殊
+1+2+0+2父祖伝来の大小
+2+3+0+3ボーナス特技
+3+3+1+3
+4+4+1+4ボーナス特技
+5+4+1+4
+6/+1+5+2+5
+7/+2+5+2+5ボーナス特技
+8/+3+6+2+6
+9/+4+6+3+6
10+10/+5+7+3+7ボーナス特技
11+11/+6/+1+7+3+7
12+12/+7/+2+8+4+8
13+13/+8/+3+8+4+8ボーナス特技
14+14/+9/+4+9+4+9
15+15/+10/+5+9+5+9
16+16/+11/+6/+1+10+5+10ボーナス特技
17+17/+12/+7/+2+10+5+10
18+18/+13/+8/+3+11+6+11
19+19/+14/+9/+4+11+6+11ボーナス特技
20+20/+15/+10/+5+12+6+12

 

表5-7:東方の冒険 新武器一覧(抜粋)
武器価格ダメージクリティカル射程単位重量タイプ
カタナ400gp1d1019-20/x26ポンド斬撃
ワキザシ300gp1d619-20/x23ポンド斬撃


  カタナ:カタナはあなたの攻撃ロールに+1ボーナスを与える高品質バスタード・ソードだ。高品質武器の攻撃ボーナスは強化ボーナスに累積しない。バスタード・ソードと同様に、カタナを片手で用いるなら《特殊武器習熟》(カタナ)特技を必要とする。中型キャラクターはカタナを両手用の軍用武器として用いる事が出来、大型クリーチャーは同様に片手で用いることが出来る。ロクガンのサムライでは、一般に竜一族だけが片手でカタナを用いる。
  サムライキャラクターにとって、カタナは剣というより彼の名誉にして氏族の名誉となる。それは他人に使われることのない、個人的な武器だ。カタナを納めた鞘に触れることはサムライを侮辱することだ。許可なく刃を引き抜く事は重大な侮辱だ。一振りのカタナは大切な先祖伝来の家財であり、何世代もの間に伝えられ続けたものかもしれない。カタナはしばしば、それらが使われた伝説を反映し、個々の名前を持っている。このような武器を失うことは、武器を取り戻し、強奪者を罰することによってのみ返上できる汚名である。多くのサムライが氏族の武器を取り戻すため、自身の生命を奉げた。サムライにとってのカタナの重要性は、サムライクラスの《父祖伝来の大小》で反映される。
  カタナはサムライがサムライとの戦いで使うべき唯一の高潔な武器だ。蟹一族の一員が、特に、テツボウやオノとダイ・ツチのような武器で知られているが、しかしそれらは一般にシャドウランドの人間以外の棲息者に対して用いられる。サムライに対しては、蟹一族のサムライでさえ彼のカタナを使わなくては不名誉として捉えられる。

  ワキザシ:ワキザシはあなたの攻撃ロールに+1ボーナスを与える高品質ショート・ソードだ。高品質武器の攻撃ボーナスは強化ボーナスに累積しない。
  サムライのワキザシは彼のカタナと対になる存在で ‐ カタナと同様に ‐ 彼の名誉の重要な部分を成す。サムライは滅多な事ではそれを戦闘に用いることはなく、竜一族の二刀流使いたちがそれを用いる。その最も顕著な使用手段は切腹と呼ばれる自殺儀式である。サムライ以外の貴族階級(主にシュゲンジャ)キャラクターはワキザシのみを佩き、戦闘において用いてもよい。


居合術熟練 Iaijutsu Focus 【魅力】

  居合術決闘であなたの個人的エネルギー“氣”を奮い起こすためにこの技能を使う。
  判定:もし、近接武器を引き抜いたすぐ後に、あなたが立ちすくみ状態の対抗者を攻撃するなら、あなたは〈居合術熟練〉判定の結果に基づいた追加ダメージを受け取ることができる。加えて、もしあなたとあなたの対抗者が共に正式の居合術決闘に参加することを同意するなら、あなたの〈居合術熟練〉判定は、それに続く戦闘に用いるあなたのイニシアチブ判定ともなる。
  居合術決闘(第6章参照)で、あなたとあなたの対抗者は〈居合術熟練〉判定を比べ合い、そして勝利者は表に従って追加ダメージダイスを蓄積する。
  同じくあなたは〈居合術熟練〉活用し、準備し集中することで、非可動の物品を攻撃するために使うことができる。追加ダメージは、通常に比べて半減する。これは武術家が物品を粉砕するために使う技だ。

判定結果追加ダメージ
10〜14+1d6
15〜19+2d6
20〜24+3d6
25〜29+4d6
30〜34+5d6
35〜39+6d6
40〜44+7d6
45〜49+8d6
50以上+9d6(最大値)


通常戦闘での居合術攻撃 Iaijutsu Strike in Normal Combat

  あなたは通常戦闘で〈居合術熟練〉ボーナスダメージを使うこともできるが、対抗者が立ちすくみ状態で、かつあなたは攻撃と同じラウンドに武器を引き抜かなくてはならない。
  これはキャラクターが不意打ちラウンドに《早抜き》を用いて〈居合術熟練〉を使う状態であり、目標が剣の間合いにいるか、部分突撃の終端にいなくてはならない(《早抜き》による初撃を用いる)。もし彼がラウンド開始時に納刀した状態であるなら、《早抜き》がないキャラクターは不意打ちラウンドに対抗者を攻撃することができない。
  通常の第1戦闘ラウンドでは、対抗者に対してイニシアチブを得て武器を抜かれるより早くに対抗者に接近し、《早抜き》を持っているか基本攻撃ボーナスが+1以上あるなら、〈居合術熟練〉を用いて攻撃することが出来る(彼は移動中に武器を引き抜く)。