ネヘオド寺院 The Temple of Neheod


  「クリサンドラルは悪の勢力が強力である事を知っていた。そして善の勢力がより強いことを。信念、希望、愛、慈善、信用、真理…。これらはすべて、彼の伝説的活力の源だった。悪は彼の魂が放つ光芒に耐えることができなかった。彼の正義は、彼の才覚と勇気、才能と結びつくことにより、常に最後には勝利を収めるのだった。」
  "Klysandral knew that as powerful as the forces of evil were, good was stronger. Faith, hope, love, charity, trust, truth... these were the things from which he drew his fabled strength. Evil could not stand the bright light of his soul. His righteousness, when coupled with his ingenuity, prowess, and power, would always win in the end."
マイチャス・ガイルによるクリサンドラルの追悼演説より
Michuth Gyl, the Eulogy of Klysandral

 

ネヘオド寺院   己が自身の世界から引き離され、地獄の大穴に押し込まれてしまったネヘオド寺院には、ありとあらゆる不幸が襲っていた。寺院は地獄の第五層と第六層の間に横たわっており、そこには通常の次元間移動ではたどり着く事ができなかった。ここであれば防衛者たちに支援の手は届くまいと考えた九層地獄の軍勢は、防衛者たちを抹殺し、寺院を冒涜し、至聖所に納められているレリックを略奪しようと試みる。


地獄に到着してからの出来事 Events Since Arriving in Hell

  ネヘオド寺院が九層地獄に到着したのは、PCがエミリコルの隠れ砦に向けて出発した24時間後である。恐らく、PCがステュギアに到着するのはそれから3〜5日後だろう。短く見積もっても、寺院は冒険者の救援が到着するまで、ゲリュオンの暗黒の軍勢に4日間から1週間(PCの休憩日数次第)は対峙することになる(もちろん、ここには昼夜の別がない。そのため、寺院の防衛者たちは日数を正確に数えていない)。

  寺院内にいたクリサンドラルの葬儀の参列者は、これらの出来事に対して対処すべく努めた。戦士の多くは、葬儀の際に着用していた緑のローブを返上して鎧を身にまとった。一同に驚愕と衝撃を与えたのは、クリサンドラルの魂がその棺を離れると生前の鎧を身に着け、寺院の防衛に立ち上がったことだ。皮肉にも、彼の魂は地獄に落とされたことにより、パラディンの精神は生きている時のように活動できるようになったのである(セイクリッド・ウォッチャーのテンプレートを得る)。最初の衝撃が薄らいでいくにつれ、彼の存在と激励の言葉は彼の(死を悼むために参列した)友人たちを歓喜させた。

  デヴィルの初撃は痛烈だった。しかし寺院の防衛者の数と質についての情報が足りなかった。特にクリサンドラルの魂に直面することは計算外だった。デヴィルはたちまち撃退された。ゲリュオンは自軍を再編すると波状攻撃を浴びせかけた。寺院は1区画1区画、徐々に陥落していった。

  戦いが始まってからおよそ4日が過ぎたころ、ゲリュオンの攻撃は休止した。そのとき、クリサンドラルは寺院の背後で不審な音がするのを感じた。彼は地獄第六層マーレボルジェのデヴィルが、寺院に突入するべくトンネルを掘っていることを発見した。偉大な戦士の魂は寺院防衛を勇敢なる者たちに任せ、魔軍に単身突撃した。

  しかしながら、クリサンドラル不在のまま地獄第五層の襲撃を持ち堪える事は困難であり、善の勢力は苦戦し始めた。寺院の大祭司、ブラザー・リシャール・ニーアモールはこの猛攻を前にして倒れた。寺院の指揮は女司祭シスター・サーラが引き継いだ。生き残った防衛者は至聖所を最終防衛線として立てこもり、死地と定めた。彼らはクリサンドラルに何が起きたか、どのような事情が生じたかについて何も知らなかった ‐ 彼らが望むのはただ生き延びることだけである。

  この聖域はウィッシュ を用いたとしても調査することは不可能である。ゲリュオンは配下の軍勢に、寺院の人々を狡猾な罠と誘惑を用いて抹殺するように命じた。デヴィルは地獄の門を広げ、その悪しき腐敗的な影響を、彼らが制圧した区画に蔓延させていった。ゲリュオンと彼の下僕は寺院防衛者の死体をゾンビ化し、生き残った防衛者に突撃させた。デヴィルは捕虜を無慈悲な拷問にかけ、防衛者は彼らの悲痛な叫び声を聞かされた。救助隊が編成されて強力なデヴィル軍に立ち向かったが、すべて撃退されるか玉砕した。ゲリュオンの手先は、彼らを絶望させるためにはありとあらゆる手を尽くした。これらの動きは防衛者を不利にするだけではない。これは寺院を地獄に引き止めておく機能も果たしている。寺院を本来存在すべき場所に戻すには、錨の役を果たす悪と堕落を放逐しなくてはならなかった。


エミリコルの間諜 The Eyes and Ears of Emirikol

  〈混沌〉のエミリコルは彼の友人タイアーを、敬意を払う意味で代理人としてクリサンドラルの葬儀に向かわせた。悪しき魔法が寺院を地獄に引きずり込んだとき、タイアーもともに地獄に落ちた。しかし、彼女はエミリコルと感覚を共有しているため、ケイオス・メイジはタイアーの耳目を借りて起きた出来事を感知することができた。彼は友人の身の上を非常に案じている。しかしエミリコルの心はそれ以上に、この出来事の背景を知りたいという欲求に駆られていた。これはなぜ起きたのか? 彼は外方次元界の出来事に精通しており、これら一連の出来事にはアスモデウスが関わっている事を知っていた。しかし彼には第九層の主の真意を見抜くことができなかった。

  エミリコルはデヴィルの襲撃が起きた後、タイアーに危険から離れているようにとメッセージを送った。彼女はそうしなかった。彼女は活路を見出すために行われた、結局は失敗した反攻計画に参加した。今現在、彼女は第10区画にある秘密部屋に隠れている。

  エミリコルはヴェイリス・クリスタル 第13区画参照)の来歴と効果を知っている。もし彼が(タイアーを介して)クリスタル を見たなら、これら一連の出来事は突然意味をなすだろう。そして彼は代理人に、クリスタル をアークデヴィルとの交渉に用いるため盗むように伝える。

  タイアーはエミリコルと会話することができる;ウィザードは彼女が聞いた音を聞くし、逆も同様である。この接続により、彼女は冒険者パーティーが寺院上方に接近していることを知っている。

  タイアーはティーフリングだ:彼女は人間の体を持っているが、下方次元界の血が流れている。彼女は黄色く光る目を隠すため、特殊なコンタクト・レンズを着けている。彼女は長く豊かな黒髪で角を隠している。しかしながら、それがあったとしても彼女は美しい。他の葬儀参列者の大部分と同様に、彼女は武器と鎧を装備しているが、まだ緑のローブをはおっている。タイアーのエミリコルへの献身は本物だ。彼女は普通に嘘をつき、騙し、盗むが、他者を傷つけることを喜ばない。

 

ティーフリングのタイアー Tiae, Tiefling (ローグ13):ヒット・ポイント57、【筋】10、【敏】19、【耐】12、【知】16、【判】14、【魅】16
装備:+5レザー・アーマー、〈切り裂き丸 Slash〉と名付けられた+5キーン・ショートソード (これらはいずれも物質界で作られたため、ここでのボーナスは+3だ)、リング・オヴ・ジョイニング (これら一対のリング を持つもの同士の五感は共有される。もうひとつのリング の持ち主はエミリコルだ)。リング・オヴ・シャドウズ (灰色のガラスで作られたこのリング は、回数無制限で〈隠れ身〉に利用可能な10フィート立方の暗がりを作り出す)、フィギュリーン・オヴ・ワンドラス・パワー(エボニー・フライ)。キュア・クリティカル・ウーンズ、プロテクション・フロム・エナジー、ガシアス・フォームのポーション。


アスモデウスの下僕 Asmodeus' Servant

  アスモデウスは強力な定命者が彼の領域を侵略し、自身の計画を破壊したことを覚えていた。そこで彼は寺院攻略の指揮を魔女ラヴィアスに命じた。彼女は寺院に赴き、いかなる手段を以ってもこれを抹殺しなくてはならなかった。アスモデウスが脅威と評価した要因の中で最も驚くべき出来事は、〈混沌〉のエミリコルが地獄の中にまで冒険者を送り込んだことだ。エミリコルはかつてアスモデウスの計画を頓挫させた定命者のひとりであった(ネッソスの主は、エミリコルが幾柱かのアビサル・プリンスの評価を得た人物であると知っている)。

  ラヴィアスは数々の防御呪文を発動するまで危険な状況に身を置こうとはしない(プロテクション・フロム・エナジー [火]、[電気]、スペル・イミュニティー(マジック・ミサイル)、ストーンスキン、インヴィジビリティ、ネイティヴ・アイテム リング に対し)、ブラー )。ネヘオド寺院でPCと対峙する前に、彼女はカイハー・ソーンをリザレクション し、第7区画のルモアハズをヒール/チャーム する。ラヴィアスを動かすには以下に注意しろ:

 ラヴィアスはマップ上の特定の場所に固定されていない。DMはPCに対して効果的な場所に彼女を動かすべきだ(倒れたモンスターを復活させ、様々な区画に移動して遊撃的に攻撃させろ)。(PCの勝利で)冒険が終了し、寺院が本来の次元界に帰還する時点で彼女は最後の攻撃を仕掛けるため、それまで殺されないようにしろ。

 

ラヴィアス Loviath (クレリック5/ウィザード5/ミスティック・シーアージ10/エピック・クレリック2):ヒット・ポイント、S 12 D 18 C 15 I18 W 18 Ch 9
装備:ロッド・オヴ・アブソープション (黒い柄で先端に銀のデヴィルの頭部が付いている。12レベル分のチャージがあり、あと23レベル分吸収できる)、ワンド・オヴ・ヴィトリフィケーション (透明なガラスのワンドから不可視の光線が発せられる。攻撃が命中したクリーチャー1体、もしくは100立方フィートまでの物体は頑健セーヴ難易度16を行い、失敗するとガラスに変成する。射程60フィート。13チャージ)、ローブ・オヴ・アークマギ (黒、これはクローク・オヴ・ザ・バット でもある)、+5リング・オヴ・プロテクション (物質界で作られたため、現在のボーナスは+3である)、ポーション・オヴ・ガシアス・フォーム 、以下の呪文が記された秘術スクロール:チャーム・モンスター、アーケイン・アイ、コーン・オヴ・コールド、ビグビーズ・フォースフル・ハンド、フィンガー・オヴ・デス。
信仰呪文:
 1レベル:コーズ・ライト・ウーンズ、キュア・ライト・ウーンズ×3、カース、ダークネス、ライト、プロテクション・フロム・グッド、サンクチュアリ
 2レベル:エイド、チャーム・パースン、ヒート・メタル、ホールド・パースン×2、サイレンス、スピリチュアル・ハンマー、ウォープ・ウッド
 3レベル:アニメイト・デッド、コーズ・パラリシス、クリエイト・フード・アド・ウォーター、キュァ・ブラインドネス/デフネス、ディスペル・マジック×2、プロテクション・フロム・エナジー、ウォーター・ブリージング
 4レベル:キュア・シリアス・ウーンズ、ネイティヴ・アイテム×2、ニュートラライズ・ポイズン、プロテクション・フロム・エナジー、スペル・イミュニティー
 5レベル:コーズ・クリティカル・ウーンズ、フレイム・ストライク、プレイン・シフト、スレイ・リヴィング、ウォール・オヴ・ファイアー
 6レベル:ブレード・バリアー、ハーム、ヒール
 7レベル:アンホーリィ・ワード、リザレクション
秘術呪文:
 1レベル:バーニング・ハンズ、フェザー・フォール、マジック・ミサイル×2、スパイダー・クライム
 2レベル:ブラインドネス、ブラー、テレキネシス、インヴィジビリティ、ウェブ
 3レベル:クレアーヴォイアンス/クレアーオーディエンス、ファイアーボール、ライトニング・ボルト、サジェスチョン、イセリアル・ジョーント
 4レベル:エヴァーズ・ブラック・テンタクルズ、ディメンジョン・ドアー、マイナー・グローヴ・オヴ・インヴァルナラビリティ、ファンタズマル・キラー、ストーンスキン
 5レベル:メジャー・イリュージョン、ビグビーズ・インターポージング・ハンド、クラウドキル、サモン・モンスターX、ウォール・オヴ・アイアン
 6レベル:チェイン・ライトニング、フィンガー・オヴ・デス
 7レベル:リミテッド・ウィッシュ

ヘルキャット、〈六尾〉のミーリール Mierile Six-Lives, Hellcat ヒット・ポイント60;『モンスター・マニュアル』141ページ


寺院内の冒険 Adventuring in the Temple

  ネヘオド寺院はその環境から、周囲に特殊な状況を生み出している。地獄がもたらす腐敗の影響は神聖なる寺院をとらえ、内部に侵入しつつあった。

  寺院のステンドガラスに映るのは黒い石だけである。寺院内の天井は、各部屋それぞれ20フィートである。塔内の天井にあってはそれぞれ12フィートである。

  DMは寺院内の人々が各区画に閉じ込められているわけではないことを覚えておけ。エリニュスのミンガは寺院内を放浪している ‐ 彼女はしばしば不浄の戦士カイハー・ソーンを道連れにしている。ラクシャーサ(第14区画A)は寺院内でタイアーを捜索している。彼にはエミリコルとの契約があるからだ…。


アンデッドの扱い Dealing with the Undead

  寺院内を冒険する一行は、ここで遭遇するアンデッドを手際よく片付けることができるだろう。しかしながら、これらのアンデッドはすべて、ここ数日でアンデッドにされた善属性のネヘオド信者である(少なくともクリサンドラルの葬儀会葬者)。これらのアンデッド・クリーチャーを破壊するクレリックやパラディンは、体の中を“悪寒”が走ることに気付く。これはアンデッドに手を下してはならないという警告の役割を果たす。〈知識:宗教〉判定難易度20に成功することで、下方次元界で破壊されたアンデッドの魂は永遠にここに留まり続けなくてはならないことに気付く。

  寺院内およびその周辺において、以下の呪文はアンデッドに対して特殊な影響を与える:

ブレス、プレイヤー、リムーヴ・カース、
ディスペル・イーヴル、ホーリィ・ワード、レストレーション
これらの呪文をアンデッドに対して発動した場合、対象は即座に無力化される。しかしその残骸は穏やかな、普通の死体に戻る。これらの呪文はアンデッド・クリーチャーが破壊される前に発動されなくてはならない。
レイズ・デッド 1体のアンデッド・クリーチャーを蘇生させる(ヒット・ポイントは0)。
リザレクション 1体のアンデッド・クリーチャーを復活させる(ヒット・ポイントは最大値)。

  寺院が旧に復したなら、プレイヤーが捕え束縛していたアンデッドはただちに平穏な死体に戻る。

  DMは可能であるなら、プレイヤーを驚かせる目的でアンデッドを活用すべきである。それらの多くは子供や気高き騎士、温厚な老人のように思われる。ネヘオド寺院に詳しいPCであるなら、彼らの名前や人柄すら思い出すことができるだろう。


寺院を物質界に復元する Restoring the Temple to the Prime Material Plane

  バンズ・オヴ・ヘル は永続的な呪いではない。寺院を地獄に留める為に、デヴィルは内部を悪と腐敗で満たしておかなくてはならない。逆に言えば、寺院を本来の次元に復元するため、PCは寺院内を旧に復してデヴィルの影響を払拭しなくてはならない。彼女らは独力でこの結論に到達しても良いし、至聖所にいるクレリックが彼女らに話しても良いだろう。英雄が寺院を復元可能な領域に達したかを決定するため、DMは“回復ポイント”を記録する必要があるだろう。

10寺院の破壊された箇所を修復するため、1人が1時間を費やす毎に
25寺院の破壊された箇所を修復するため、呪文を1回発動する毎に
25寺院内のアンデッドを普通の死体に戻す毎に
100倒れた信者を蘇生/復活する毎に(最大で300ポイントまで)
200倒れたクレリックを蘇生/復活する毎に(最大で600ポイントまで)
−10寺院内のアンデッドを破壊する毎に
−10PC到着後、防衛者や信者が死亡する毎に
−50入口の彫像を破壊する毎に
−50寺院を破壊する呪文が発動される毎に
様々寺院内の邪悪なクリーチャーを抹殺する毎に

 

  これらの他にも、寺院内の特定区画において回復ポイントの増減は行われる。ポイントの蓄積により、寺院は異なるフェーズに突入する:

フェーズ1:50ポイント寺院内を冷たい空気の波が駆け抜ける。すべての防衛者は次のd20ロールに+1清浄ボーナスが与えられる。
フェーズ2:200ポイント寺院は物質界と魔法リンクを取り戻す。呪文と魔法のアイテム(武器と防具を含む)は本来の次元界に属しているように機能する。突然、デヴィルはすべての魔法のアイテムについて、PCと防衛者たちが経験していたような−2ペナルティに直面する。しかしながら、ラヴィアスのようなPCの対抗者たちの中には、物質界で能力が増強されるアイテムを持っているものもいる。クレリックは神格との結合を喪失したことにより失われた呪文を取り戻す。しかしながら、ディスミサル ホーリィ・ワード を発動したとしても、ここはデヴィルの故郷の次元界であることから、彼らは第1区画の外まで送り返されることをDMは忘れてはならない。彼らは自由に再侵入することができる。
フェーズ3:600ポイント寺院の床(第10区画)を覆っている溶岩は消え失せる。床は通常に戻り、祭壇と床をつないでいた階段も元に戻る。
フェーズ4:1000ポイント寺院は完全に復旧し、物質界に復元する。回復ポイントが1000ポイントを超えた10ラウンド後にこれは起こる。そしてこの現象は、内部にいる者は善悪問わず知覚することができる。寺院に残るアンデッドは本来の、安らかな死を迎えた遺体となる。デヴィルと他の生きているモンスターは寺院とともに次元間移動しても良いし(若干のものは問題のタネとなるだろうが、それは別の問題である)、地獄に逃れても良い。ネヘオド寺院は若干の差異はあるものの、それが奪い去られた場所に復元する。PCが発動するウィッシュ/ミラクル 1回毎に、殺された信者や会葬者、クレリックの遺体のうち、80+1d10%が寺院内に復元される(それは元々の70%程度に相当する)。これらの出来事は全体としてみれば悲劇であるが、PCが成した偉業はまさしく英雄的である。


徘徊するモンスター Wandering Monsters

  PCは寺院内の区画を移動する毎に(第13区画を除き)、徘徊する悪のクリーチャーと遭遇する可能性がある。区画を移動するに、DMは1d20ロールを行い、以下の遭遇表に適用しろ:

01〜07遭遇なし
08〜09硫黄の悪臭が周囲を漂う
10遠くから助けを求める叫び声が聞こえてくる
11悪事を暴く囁き声が聞こえてくる
12遠くから恐るべき高笑いが聞こえてくる
13遠くから痛みを訴える叫び声が聞こえてくるが声は突然に止む
14視界の隅を幽体がよぎる
15レイス3d6体(緑のローブを着ている)
16オシュルス1d4体
17バルバズゥの狩人3d4体
18グリーン・アビシャイの食料調達隊3d4体
19オーガ・メイジ4d4体
20アモン80%、ゲリュオン20%(まだ生きているなら)

  遭遇表のうち、異音や異臭の結果が出た場合は何の脅威もない。しかし嫌な雰囲気を漂わすことによりPCに無意味な探索や救助活動を行わすことができるかもしれない(このような時、DMは自由に状況を設定してよい)。
  「悪事を暴く囁き声」とは、PCが以前に犯した罪 ‐ ほとんど忘れていたような些細なもの ‐ について囁いている。
  「視界の隅をよぎる幽体」とは、地獄を彷徨う幽霊であり、彼らは迷っているか悩んでいるように見える。彼らは危険ではなく、意思の疎通もできず、PCに気付いた様子も見せない。

  レイス、オーガ・メイジ、オシュルスは見込みがあると思えば攻撃を掛けてくるが、見込みがないと思えば逃走する。このようなクリーチャーは、デヴィルの警戒を潜り抜けた定命者がいないか探すため寺院をパトロールしている。
  オシュルスは〈冷鋼砦〉第25区画に記されたように〈つば吐き銃〉を装備している。
  「バルバズゥの狩人」は太い鎖と枷を持っており、脱走したルモアハズを探している。
  「グリーン・アビシャイの食料調達隊」は食べることができそうな、もしくはゾンビ化できそうな死体を集めている(彼らには2d4体のゾンビがしたがっている)。
  もしアモンかゲリュオンと遭遇したなら、彼らは下僕(《バーテズゥ招来》の種類より選抜)を従えており、至聖所に攻め込む別の方法がないかを検討している。

 

レイス Wraith ヒット・ポイント32;『モンスター・マニュアル』264ページ

オシュルス Osyluth ヒット・ポイント95;『モンスター・マニュアル』142ページ
装備:各自〈つば吐き銃〉を所持。

バルバズゥ Barbazu ヒット・ポイント45;『モンスター・マニュアル』139ページ

グリーン・アビシャイ Green Abishai ヒット・ポイント45;『魔物の書U』113ページ

オーガ・メイジ Ogre Mage ヒット・ポイント37;『モンスター・マニュアル』53ページ


デヴィルの増援隊 Diabolical Reinforcements

  PCが寺院で過ごすことにより、抹殺されたデヴィルや下僕モンスターは増援を受けて補充される(40%の確率)。これはPCがそれを成し遂げてから3分後に行われる。新たな敵は、以前に配置されていたクリーチャーと同種別である必要がない。DMは新たなクリーチャーを、〈冷鋼砦〉の生き残りか寺院内に配置されている他のクリーチャーから選択して増援として再配置する。例えば、PCが第2区画のハマトゥラと第4区画のオーガ・メイジとコルヌゴンを抹殺してから、寺院内で3分間が経過したとする。DMは1d100ロールを行う。40以下の目が出た場合、再配置が行われる。DMは別のコルヌゴンを〈冷鋼砦〉から派遣し、殺されたハマトゥラに変えて第2区画に再配置できる。 1分後、DMは第4区画のクリーチャーを再配置するための1d100ロールを行うことができる(この過程はPCが後任となるクリーチャーを全滅させるまで続く)。


ネヘオド寺院 寺院の配置 The Temple Layout

1.玄関 Vestibule7.暴れる獣 Ravaging Beast14A.欺瞞 Deception
2.穢れた水盤 Defiled Font8.塔の守護者 Tower Guardian15.堕落した魂と地獄の花
   Corrupted Spirits and Hellish Blooms
3.倒壊した塔 Riven Tower9.拷問の広間 Hall of Torture16.不浄の戦士 Unholy Warrior
4.瓦礫選別隊 Rubble Sifters10.地獄の身廊 The Infernal Nave17.邪悪の僧侶 Priests of Evil
5.泣き叫ぶ牢獄 The Wailing Prison11.祭壇の裏切り The Altar's Betrayal18.死者の主 Death's Master
6.デヴィルの休憩用洞窟 Caverns of Diabolical Respite12.戦禍の間 War-Torn Room19.浮遊する恐怖の洞窟 Cavern of Floating Horrors
6A.空っぽの洞窟 Empty Cave13.至聖所 Holy of Holies20.奇妙な階段 Strange Stairways
6B.ドラゴンの悪漢 Draconic Malefactor14.死者の広間 Hall of the Dead20E.溶岩洞窟 Lava Bubble


マーレボルジェ Malbolge

  扉の向こうには、固い岩盤を掘り抜いて作られた1本の通路が設けられている。通路は地獄の第六層マーレボルジェにつながっている。マーレボルジェのデヴィルは、何かが地獄に現れたことを知ってから3、4日を掛けてこの通路を掘り進めてきた。第六層の主はマラガールデ(バールゼブルの総督であるモロクが死した後、アスモデウスが就任させた)であるが、寺院については何の情報も得ていなかった。しかし他のデヴィルがそれを狙っているのであれば、それを先んじて制圧することは良策であると考えた。

  マーレボルジェは全土が傾斜しており、常に玉石が転がり続ける層だった。時折、これらの玉石は比較的安定した地域に積み重なることがあった。ネヘオド寺院に至るトンネルはこのような場所から掘り進められていた。ここには生命の兆候がなく、いやに暖かい。空は真っ黒なすすけた雲で満ちている。


トンネル The Tunnel

  岩盤を掘り抜いた粗雑なトンネルはおよそ1000フィートに渡って続いている。その途中の床には、様々な種類の殺されたデヴィルが倒れている。大部分の者は、剣と思われる力強い一撃で屠られていた。DMが余計な遭遇を望まないのであれば、通路はマーレボルジェに至るまで一本道のまま続く。

 

断崖絶壁 The Precipice:トンネルの突端、つまりマーレボルジェを臨む断崖絶壁の頂上において、疲れを知らないクリサンドラルの魂は、無限とも思える地獄の軍勢相手に戦い続けている。マレブランケ、バーブド・デヴィル、ボーン・デヴィル、そして少数のアイス・デヴィルが彼に群がり、数か呪文で圧倒しようと襲い掛かるが、パラディンは大地に踏みとどまり続けている。

  クリサンドラルはここで勝利することは叶わないと知りつつも、不退転の決意で聖剣を振るいデヴィルを倒している。彼の背後には無辜の民がおり、彼の敗北はすなわち彼らの死と同義である。クリサンドラルはそのようなことを認めることが出来ず、ここに踏みとどまり続けているのである。

  PCは短時間ならば彼の手助けが出来るが、そうだとしても彼女らの支援では潮の如く押し寄せる敵を全滅させることは出来ない。彼女らはまもなく気付く。このパラディンのみが悪の軍勢を押し留める事が出来ることを ‐ おそらくPCが寺院まで撤退するまでの時間 ‐ そしてここでの戦いは真の勝利を得るまでの手段でしかないことを。クリサンドラルは戦いながらPCと話をすることが出来る。彼は寺院の状況について尋ね、そして彼女らに寺院の住民を助けるために尽力して欲しいと嘆願する。しかし、より重要な問題として、クリサンドラルはPCに(もし尋ねられるなら)彼らを地獄に送り込んだのは、ラヴィアスというアスモデウスに仕えるクレリック/ウィザードであると伝える。彼は寺院内で彼女を見かけていなかった。しかしカイハー・ソーンがここにいた以上、彼女もここに来ていると信じていた。PCがクリサンドラルにゲリュオンの暗躍について告げると、彼は合点が行ったように事件の黒幕はネッソスの主であると悟る(そしてそれは正しい)。彼もまたヴェイリス・クリスタル の来歴を知っているが、聞かれない限り答えることはない。 エミリコルについては、パラディンはかつてウィザードが友人にして冒険者仲間であったと答えるが、悲しげに袂を分かったとだけ答える。

  PCが寺院の回復ポイントを満たし(1000ポイント)、物質界へまもなく復元しようとするその時まで、クリサンドラルは彼らに同行しようとはしない。残り10ラウンドに迫った時点で、PCは残る全力を傾けてデヴィルの足止めをし、パラディンを伴って迅速に寺院まで帰還しなくてはならないだろう。

  もしネヘオド寺院がクリサンドラルを置き残したまま本来の次元界に復元したなら、彼の魂は地獄により永劫に穢され、世界が終焉を迎えるその日までアークデヴィルたちの慰みものとなり続けるだろう。クリサンドラルがこのような運命を迎えるとしたら、想像を絶する悲劇であるとしかいえない。

 

セイクリッド・ウォッチャー状態のクリサンドラル Klysandral, Spirit (パラディン20/エピック・パラディン6):ヒット・ポイント169、【筋】17、【敏】17、【耐】‐、【知】14、【判】19、【魅】18
装備:白アダマンティン製ゴーストタッチト・ホーリィ・アヴェンジャー(冷たい鉄/錬金術銀として機能する)、+5白アダマンティン製プレート・アーマー・オヴ・ブリリアンス ヘルム・オヴ・ブリリアンス に同じ)、+5白アダマンティン製ヘヴィ・シールド (これらはいずれも物質界製であり、ボーナスが低下している)、+6ベルト・オヴ・ジャイアント・ストレンクス、ブーツ・オヴ・ストライデング・アンド・スプリンギング

 

断崖絶壁の向こう Beyond the Precipice:もしPCがマーレボルジェ縦断を敢行するのなら、単に彼女らはクリサンドラルを避けようとしたデヴィルの大群に出会うのみならず、この地がファイアー・ジャイアントとヘルハウンドの領域であるのが分かるだろう。最も悪いことは、すべての地形は下り坂で構成されており、険しい足場を踏み外すと110〜200フィートは落下しなくてはならないことである。

 〈登攀〉難易度は斜面(0)、急斜面(−15)、断崖絶壁(−25)であり、移動速度は通常の1/4に制限される。〈登攀〉判定に−5ペナルティを課すことで移動速度を2倍にすることができる。判定に失敗した場合は移動できない。失敗が−5以上であるなら滑落する。落下距離は10d10+100フィートであり、10d6ポイントのダメージをこうむる。〈登攀〉判定に再度成功すれば滑落を防ぐことが出来る(斜面10、急斜面25、断崖絶壁45)。